カレンダー撮影記:ボツワナ 第5話
第5話:いのちのリレーを目の当たりにするとき、特別な感情が芽生える。
ゾウにとって群れの動きは逆らうことのできない絶対の存在だ。勝手に好きな道を歩くことは許されない。生まれたばかりの赤ちゃんゾウでもこのおきては守らなくてはならない。
ゾウの群れが川を目ざして歩いてくる。いったいどこを渡るのか。このときは勘でここだと決めた場所に車を停めた。僕の直感が大当たり。車の両脇をゾウが移動していく。圧巻の迫力だった。
インパラがライオンを警戒している。だが、草原から森に移動中のヌーの群れはライオンの存在に気付いていなかったようだ。メス5頭が一気にヌー2頭を仕留める。狩りが成功するかどうかは瞬時に決まる。ほんの2〜3分が勝負だ。不思議なものでじっくり時間をかけ、慎重に獲物を狙ったときほど成功率が低い。
狩るものと狩られるもの。狩りの決定的な場面を捉えるために、最初はライオンの目になってカメラを構えていた。だが、獲物を仕留めたその瞬間、僕の意識はライオンからヌーに切り替わる。消えゆくいのちと気持ちが同化する。ヌーに噛みついたとき、ライオンはライオンとしていのちの糧を得て生きる頂点にいる。ヌーはヌーで、死に抗い、生命の最後の輝きを放つ。運命の交錯。生と死の狭間で行われる尊いいのちのリレーを目の当たりにすると、僕はいつもとても神聖な気持ちに捕らわれる。
ボツワナ編 一覧
野生動物 一覧