カレンダー撮影記:ボツワナ 第11話
第11話:チーターの美しさは悲しみが描き出したアートなのかもしれない。
レインツリーの大きな木陰の下でチーターが獲物を狙ってあたりの様子をうかがっている。6mほどの距離まで近づき、その姿をローアングルで捉える。
チーターは精悍で優美な姿から、きわめて優秀な捕食者と思われがちだが意外にもランキングは低く、チーターの下にはジャッカルがいるぐらいだ。その驚異的なスピードが心臓に大きな負担をかけてしまうため、何度も狩りにチャレンジすることができない。また、ライオンのように長い距離を追い回すこともできない。そのため狩りにはきわめて慎重だ。相手までの距離、そのスピード、その動き、さらには周辺の地形まで冷静に把握し、確実に仕留められると確信できるまで動き出すことはない。とくに母チーターはむやみに獲物を狙って怪我をしてしまっては子どもたちのいのちにも関わってくるので、より慎重になる。狩りは追いかける側にとっても危険な行為なのだ。
獲物を捉えようとする直前のチーターの瞳に宿る光は美しい。だが本当に美しいと感じるのはその背中だ。草原を歩くときに消え隠れする背中を見ると思わず涙がこぼれそうになる。アフリカに生きるすべての生命の重さをその背中にしょっているかのように感じることがある。弱さや悲しみがチーターの美しさの根源にある。
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