カレンダー撮影記:パンタナール 第12話
第12話:ハッと気づいたら、パラグアイカイマンの目玉が、僕のすぐ横に!パンタナールでの撮影は、最後まで興奮の連続だった。
そろそろパンタナールともお別れという朝、僕は迫力あるパラグアイカイマンの写真を撮りたいと、川に出かけた。川は、昇ったばかりの朝日を浴びてキラキラと輝いている。すると、水の中にいたパラグアイカイマンが大きく背中をそり返らせ、ウォと吠えながら体をブルッと震わせた。水しぶきがシャーッと飛び散った。これは、彼らにとって目覚めの儀式のようなものだろうか。僕が見た限り、やるのは必ず朝いちばんで、それも一回しかやらないのだ。
岸辺にはたくさんのパラグアイカイマンが寝そべっていた。彼らはけっこう敏感だ。近寄りすぎると、水の中に逃げてしまう。僕は自分も腹ばいになり、カメラを構えながら、そーっとほふく前進して近づいた。ぜひともアップで撮りたい。もっともっと近寄れないか。そのときだった。ファインダーにいるワニの目玉が動いた。明らかに、こちらを気にしている目玉だった。どうやら僕は夢中になって、彼に近づきすぎたようだ。気づけば、僕のからだは彼と添い寝するような格好になっていた。こんなに近寄ってしまって、僕も驚いたが、彼もこわかったにちがいない。ごめんね、パラグアイカイマン。そのあと、彼は何事もなかったように、すーっと川の中に入っていった。
ロッジに帰って、このときの写真を見たら、パラグアイカイマンの歯がキレイなことに驚いた。撮りたかった写真が撮れたが、からだは痛痒くて仕方ない。這いつくばっている間、ハエのような虫にたくさん噛まれたのだ。
僕はこれまでさまざまな地で撮影取材を行ってきたが、初めて訪れたパンタナールの大自然には圧倒された。一年の半分が洪水となるパンタナールの自然は、経験したことがないものだった。水も大地もエネルギーに満ちあふれ、野生動物たちはストレスを受けていないのか、生き生きと輝いて見えた。語り尽くせないほどの感動の出会いを胸に、僕はパンタナールをあとにした。
パンタナール編 一覧
野生動物 一覧
- Botswana「アフリカ屈指の野生の楽園 - ボツワナ」
- 「Wisdom of the Wild / 時の鼓動。生命の躍動。」(パンタナール)
- Pantanal「生命みなぎる大湿原 - パンタナール」
- Galapagos Islands「絶海に生きる - ガラパゴス諸島」
- Madagascar「原猿の棲む島 - マダガスカル」
- Ngorongoro「いのち育むカルデラ - タンザニア・ンゴロンゴロ」
- The Peninsula and the Island「世界自然遺産 - 知床と屋久島」
- Land of the Brave「気高き者たち - ナミビアの野生」
- Splendor in North America「雄大なる輝き - 北米大陸」