カレンダー撮影記:パンタナール 第7話
第7話:ジャガーの決定的瞬間をスクープ!森の中はきっと、ワニの墓場だろう。
ジャガーは地球上で最も美しい動物のひとつだと思う。しなやかで逞しいフォルムといい、ハンサムな顔立ちといい、すっかり虜になった。
僕はジャガーを見つける達人であるガイドのMr.ジャガーとボートに乗り、ジャガーが森から水辺に出てくるのを待っていた。乾季はジャガー目当ての観光サファリボートが多く、僕たちの前を横切っていく。観光ボートの縁には、砲列のようにカメラが並んでいる。観光客たちはジャガーを待つ間、自分が持ってきたカメラの自慢話をしている。彼らから話しかけられた僕は動物写真家だと答えると、「プロなのに、何でそんなに小さなカメラなんだ?」と訝しげな顔をされた。
川を上り下りしながら、ジャガーを探索する。Mr.ジャガーはボートのエンジンを止めると、耳をそばだてた。森の声を聞いているのだ。鳥が騒げば、近くにジャガーがやって来たのかもしれない。彼は何かを感じたかのように、再びボートを走らせた。蛇行する川のコーナーを回ったところで、僕に向かって、「あそこを見ろ」とでも言うように、ある木のほうを指差す。なんと木の上には、大あくびをしているジャガーがいた。木の上にいるジャガーと出くわすのは、たいへん珍しい。Mr.ジャガーも長いガイド歴のなかでもとても珍しいと言う。実に貴重な姿を捉えることができた。このときばかりはMr.ジャガーも、自分のカメラを取り出して撮影していた。
それから一週間ほど経ったある日も、僕たちはボートに乗ってジャガーを待っていた。午前中、一頭のオスが現れ、また森に引き返した。僕たちは川の半ばでイカリを下ろし、お弁当を食べることにした。そのとき、猛烈な水しぶきの音がした。岸辺を見やったとたん、僕はお弁当を放り投げ、カメラを掴んだ。ジャガーが崖から川に飛び込んで、大きなパラグアイカイマンに喰らいついたのだ。一撃のもとに仕留めると、森に引きずり込んだ。森の中はきっと、ワニの墓場になっているに違いない。
パンタナール編 一覧
野生動物 一覧
- Botswana「アフリカ屈指の野生の楽園 - ボツワナ」
- 「Wisdom of the Wild / 時の鼓動。生命の躍動。」(パンタナール)
- Pantanal「生命みなぎる大湿原 - パンタナール」
- Galapagos Islands「絶海に生きる - ガラパゴス諸島」
- Madagascar「原猿の棲む島 - マダガスカル」
- Ngorongoro「いのち育むカルデラ - タンザニア・ンゴロンゴロ」
- The Peninsula and the Island「世界自然遺産 - 知床と屋久島」
- Land of the Brave「気高き者たち - ナミビアの野生」
- Splendor in North America「雄大なる輝き - 北米大陸」