カレンダー撮影記:パンタナール 第10話
第10話:岸辺にアメリカヌマジカが現れた。砂州ではカピバラファミリーがくつろいでいた。
川に向かい縦貫道を走っていたときのこと。突然、車が止まり、Mr.ジャガーが僕の肩を叩いた。その手で自分のカメラを取り出すと、熱心にシャッターを切る。彼が自分でも撮影するのは、貴重なシーンに出会ったときだ。何がいるのかと思ったら、雄々しいアメリカヌマジカだった。えっ?シカって、そんなに珍しい動物かなぁ……?僕たち日本人の感覚としては、シカは特に珍しい動物というわけでもない。ジャガーとの出会いを夢見ていた僕は、現れたのがアメリカヌマジカで、シカにはわるいが、内心ちょっとガッカリした。
バクを待っていたときにも、川を渡るアメリカヌマジカと出会った。大きな耳をピーンとさせ、ボートがかすかに揺れるだけで、片方の耳はこっち、片方の耳はあっちとレーダーのように動かす。彼らはヌマジカという名のとおり、湿地帯に暮らすにふさわしいひづめを持っている。胸まで水に浸かって歩いていった。
砂州には、カピバラの家族がいた。パンタナールは多様な野生動物が生息することにかけて世界屈指だが、いちばん多く見かける哺乳動物はカピバラだ。家族が仲よさそうに群れで生活している。子どもがお母さんの背中に乗ったりする姿も愛らしい。僕の印象では、アマゾンにいるカピバラはヒトを見るとすぐ逃げるが、パンタナールのカピバラは、もちろん個体によって違うが、かなり近寄ってもなかなか逃げない。ポンとお尻を触れるほどの距離にまで近づけることもある。カピバラを見ていると、食べるか寝るかで、ほかに何もしていないように見える。しかしジャガーには敏感に反応し、気配を察知すると緊張感が走る。彼らは足に水かきを持つ泳ぎの達人で、襲われそうになると、水に潜って身を隠す。ワニも天敵だといわれているが、僕はカピバラとワニがキスするほど近くにいるのを目撃したことがある。
砂州で一列に並ぶカピバラファミリーの写真を撮った。家族の記念撮影のような写真になった。
パンタナール編 一覧
野生動物 一覧
- Botswana「アフリカ屈指の野生の楽園 - ボツワナ」
- 「Wisdom of the Wild / 時の鼓動。生命の躍動。」(パンタナール)
- Pantanal「生命みなぎる大湿原 - パンタナール」
- Galapagos Islands「絶海に生きる - ガラパゴス諸島」
- Madagascar「原猿の棲む島 - マダガスカル」
- Ngorongoro「いのち育むカルデラ - タンザニア・ンゴロンゴロ」
- The Peninsula and the Island「世界自然遺産 - 知床と屋久島」
- Land of the Brave「気高き者たち - ナミビアの野生」
- Splendor in North America「雄大なる輝き - 北米大陸」