カレンダー撮影記:パンタナール 第4話
第4話:雨季に再び訪れたパンタナール。土地はすっかり水に浸かり、前回訪れた場所までは行きつけない。
初めて訪れたパンタナールにすっかり魅せられた僕は、いったん帰国し、2月末から3月中旬まで再び撮影取材に出かけた。10月から半年間ほどは雨季が続く。この時期の動物たちがどんな様子なのか、ぜひ知りたかったのだ。
パンタナールの様子は一変していた。川が氾濫して、あたり一面の土地が水浸しだ。ポコネから、前回宿泊したポルト・ジョフレへと車で向かうが、道路にも水が迫ってきて、とてもそこまでは行きつくことができない。半分ほど行ったあたりのロッジに宿泊し、撮影拠点とすることにした。
毎日のように雨が降る。1時間ほど降っては止むが、前が見えないほど激しく降るときもある。森は、乾季よりも緑が濃く感じる。マザマジカが木陰で雨宿りをしている。耳からは水滴が垂れている。
雨季のカピバラは、食べ物である水草が多いからか、何だかゴキゲンな様子に見える。茂みから現れると、キュルキュルと声を発しながら、顔だけを出して水の中を移動する。リラックスしているような表情だ。草むらにいるカピバラの背中に鳥が止まる。カピバラが動くと虫が飛び、それをついばみに来たのだ。
水に浸かった草原には、さまざまな水鳥がいる。パンタナールの代表的な鳥であるズグロハゲコウは、真っ白な大きい翼に、真っ黒な頭、赤い首元のコントラストが印象的だ。目の周囲からくちばしまで青いのは、シロゴイサギ。ダイサギやトラフサギ、ササゴイなどもいる。長い足爪を使って水面に浮かぶ植物の上を歩くのは、ナンベイレンカク。デコイを思わせるアカハシリュウキュウガモやシロガオリュウキュウガモは、リンリンと鈴のような音色で鳴く。可憐な花が咲く草むらでは、色とりどりの鳥たちがさえずっている。
聞こえてくるのは、鳥の鳴き声や水音など自然の音だけ。乾季と比べて観光客が少ない雨季は、ヒトの営みの音が気にならない。本当のパンタナールは、雨季かもしれないと思った。
パンタナール編 一覧
野生動物 一覧
- Botswana「アフリカ屈指の野生の楽園 - ボツワナ」
- 「Wisdom of the Wild / 時の鼓動。生命の躍動。」(パンタナール)
- Pantanal「生命みなぎる大湿原 - パンタナール」
- Galapagos Islands「絶海に生きる - ガラパゴス諸島」
- Madagascar「原猿の棲む島 - マダガスカル」
- Ngorongoro「いのち育むカルデラ - タンザニア・ンゴロンゴロ」
- The Peninsula and the Island「世界自然遺産 - 知床と屋久島」
- Land of the Brave「気高き者たち - ナミビアの野生」
- Splendor in North America「雄大なる輝き - 北米大陸」