カレンダー撮影記:ガラパゴス 第12話
第12話:ノースセイモア島・モスケラ島:最後の最後に、僕はアオアシカツオドリから、すごいプレゼントをもらった。
いよいよガラパゴス諸島の撮影取材も、残すところあとわずかだ。僕はヘノベサ島から赤道を南下してノースセイモア島へと向かったのだが、ちょうどメキシコに台風が来ていて、海が荒れ狂った。船は大揺れに揺れ、ベッドは水浸しになる。とんでもない目にあいながらも、何とか無事にノースセイモア島にたどり着いた。
朝の光の中で、真っ青な足が特徴のアオアシカツオドリが、くちばしと尾羽をピンと空に向けている。これはスカイポインティングという動作で、繁殖期を迎えると行う求愛のディスプレイだ。そして、片足ずつ上げて足踏みをする。彼らは地面に産卵してヒナをかえすのだが、キケンがいっぱい。アメリカグンカンドリがヒナを襲いに来たのを目撃した。グンカンドリはほかの海鳥を脅して餌を奪い取ることから、“軍艦”という名がついたらしい。オスはメスにアピールするために、真っ赤な喉袋を大きくふくらませる。空を飛んでいても、鮮やかな赤が目立つ。
僕は近くのモスケラ島まで足をのばした。ヒトのいない白い砂浜が美しい。ガラパゴスアシカが自分に庭のように、悠々と散歩している。実は19歳のとき初めてガラパゴス諸島を訪れた際も、僕はこの島に立ち寄り、天国のように美しいと感動したのだ。そしてそのとき海に潜った僕は、ガラパゴスアシカに挨拶するかのように肩を叩かれ、この経験があったからこそ動物写真家としての道を歩んだのだ。
いよいよガラパゴス諸島での撮影も終了と、飛行場のあるバルトラ島へと向かったとき、最後の最後にすごいプレゼントが待っていた。小魚の大群がやって来たのか、アオアシカツオドリの大群が採餌ショーを繰り広げたのだ。空から一直線にダイブして、魚をくわえる。水しぶきが飛ぶ。次々と群れのダイブが続く。30分間にわたって、迫力あるショーが繰り広げられた。こういう光景は、よほどタイミングがよくないと出会うことはできない。
やっぱり僕にとって、ガラパゴス諸島は特別な場所だ。最初に訪れてから四十数年の間に、ヒトは驚くほど増えたが、多くの動物たちが以前と変わらぬ姿を見せてくれた。
ガラパゴス編 一覧
野生動物 一覧
- Botswana「アフリカ屈指の野生の楽園 - ボツワナ」
- 「Wisdom of the Wild / 時の鼓動。生命の躍動。」(パンタナール)
- Pantanal「生命みなぎる大湿原 - パンタナール」
- Galapagos Islands「絶海に生きる - ガラパゴス諸島」
- Madagascar「原猿の棲む島 - マダガスカル」
- Ngorongoro「いのち育むカルデラ - タンザニア・ンゴロンゴロ」
- The Peninsula and the Island「世界自然遺産 - 知床と屋久島」
- Land of the Brave「気高き者たち - ナミビアの野生」
- Splendor in North America「雄大なる輝き - 北米大陸」