The Peninsula and the Island「世界自然遺産 - 知床と屋久島」
第1話:初めての屋久島取材は、Uターンする羽目に。
日本の世界自然遺産のひとつである、屋久島。僕は2010年から2012年にかけ、幾度となく屋久島の撮影取材に出かけた。ちょっと意外に思われるかもしれないが、実は屋久島を訪れるのは、今回が初めてだ。屋久島という存在には、前まえから興味を抱いていた。樹齢7200年とも言われる縄文杉はあまりにも有名だが、屋久島には太古から続く自然が息づいている。その深い森の中に、実際に身をおいたとき、僕の五感は何を感じとるのだろう。とても関心があるだけに、じっくり撮影取材に取り組める機会を待っていたのだ。
そして、ついに、そのときが来た。2010年6月、僕は意気揚々と屋久島へと出発した。鹿児島空港から40分ほど飛び、いよいよ屋久島に着陸。のはずだったのだが、飛行機は島の上空を旋回し、なかなか着陸しようとしない。何ということだ、雲が垂れ込めて視界がさえぎられ、降りることができないとアナウンスがある。眼下に屋久島がありながら、その日は結局、鹿児島に引き返すことになった。屋久島は雨の島だと聞いてはいたが、降り立つ前から、雨の洗礼を受けてしまった。翌日、また同じことになったらたまらないので、今度は船で渡ることにした。朝7時45分、鹿児島港を出発。3メートルの荒波をものともせず、白い波しぶきを蹴散らしながら進み続ける高速船。2時間ほどで眼前に、深い緑の屋久島が迫ってきた。
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