「Wisdom of the Wild / 時の鼓動。生命の躍動。」(パンタナール) 第11話
第11話:燕尾服を着ているようなミナミコアリクイ。彼らは木登りも得意だ。
ある日、草むらで何かが動いていると思ったら、ミナミコアリクイだった。ヒョイと立ち上がって、周囲の様子を確認している。円筒形の顔と四肢は淡黄色だが、肩から尾にかけては黒く、燕尾服を着ているように見える。毛がフサフサしているオオアリクイと比べると、毛が短く、ずいぶん小柄だ。ヒトを見かけたら逃げそうなものだが、近づいていっても意外と逃げない。こちらが危害を加えることがないとわかったのだろうか。
ミナミコアリクイは僕の目の高さほど木に登ると、鉤爪で木の穴をこじあけるようにして、長い舌を突っ込んだ。シロアリを食べているのだろう。僕との距離は2mくらいだった。彼はしばらく食事に夢中になっていたが、ふと、我に返ったように僕のほうを見た。その顔は、「え、岩合さん、そこにいたの?!」と言っているように見えた。
別の日、森を歩いていたらミナミコアリクイが木の上にいるのを見かけた。オオアリクイは地上で生活するが、ミナミコアリクイは樹上性だ。この個体は木から降りるときも飛び降りるなんてことはせず、長くて丈夫な尾を枝に巻きつけて逆さにぶらさがり、前足から静かに降りる。そして地面に降りると後ろ足で立って、体操選手のように両手を広げた。
樹上高くヤマアラシもいた。トゲは寝かせているが、下から見上げると少し立っているように見えた。双眼鏡でよく見ると、かわいらしい顔をしていた。草むらでは、アルマジロやリクガメがのっそりと歩いていた。
Wisdom of the Wild編 一覧
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