「Wisdom of the Wild / 時の鼓動。生命の躍動。」(パンタナール) 第3話
今度は、水中撮影。足元にはたくさんのワニが潜んでいる。
鳥の空撮のあとは、ワニの水中撮影だ。パンタナールには、パラグアイカイマンと呼ばれるワニが、実にたくさん生息している。初めて訪れたとき、僕はワニのあまりの多さに圧倒された。縦貫道に架けられた60本ぐらいの橋を渡るたびに川に目をやったのだが、そのたびに、山のようにひしめきあっているワニが目に飛び込んでくる。カメラを向けると、ファインダーに100匹くらいは入る。衝撃的な光景だった。
川にボートを浮かべ、いよいよ水中撮影だ。水深1mくらいだろうか。足は着くのだが、ぬかるんでいて気持ちのいいものではない。下手に歩くと水が混濁して、撮影ができなくなる。用心深く足を運んでいると、ワニが現れた。大きな口を開けて魚を飲み込んでいる。カメラのすぐ前、50〜60cmくらいの至近距離だ。僕の写真を見てくださっている方から「野生動物がすぐ目の前にいて、岩合光昭さんは襲われる恐怖を感じないのですか?」と質問されることがあるが、このときも全くと言っていいほど、襲われるという恐怖は感じなかった。こっちが攻撃する気など全くないということが、動物たちに伝わるのだと思う。
水辺には、カピバラの親子がいた。僕が子どものほうに近づいても、お母さんはチラリと見るだけだ。カピバラもまた、危険なものと、そうでないものの区別がついているのだろう。
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