「Wisdom of the Wild / 時の鼓動。生命の躍動。」(パンタナール) 第4話
ジャガーは撮り飽きることがない。その力強い美しさに、僕は魅せられてしまった。
パンタナールのガイド役であるMr.ジャガーは、そのニックネームのとおり、ジャガーを見つける名人だ。ジャガーが現れないときは、このあたりで待つことにしようと言って、ボートのエンジンを切る。そして彼は、静かに耳を澄ます。鳥の鳴き声に注意を払っているのだ。鳥たちがけたたましく鳴き交わしたら、そのあたりをジャガーが通ったという合図になる。
パンタナールのなかでも、今回訪れた北パンタナールはジャガーの生息密度が高く、岸辺にやって来るのをよく見かけた。草むらで大あくびをしているジャガーや、ワニを狩るつもりなのか、水の中を泳ぐジャガーとも会えた。これまでもパンタナールを訪れるたびにジャガーの撮影には時間をかけたし、とても気に入っている写真もある。でも、ジャガーが現れると「以前にも、これと似たようなシチュエーションの写真を撮ったことがあるなぁ」と思いつつ、撮らずにはいられない。それだけジャガーという動物は、僕を惹きつける。惚れぼれするような美しさ、力強さがあるのだ。もちろんジャガーは観光客にも大人気で、観光用のボートのへりには、大砲のようなレンズをつけたカメラがずらりと並ぶ。そしてロッジに帰れば、お互いに撮影の成果を見せ合っている。僕にも写真を見せてくれるのだが、みな、少しでも大きくジャガーを撮りたいようで、大きく撮影できたヒトは自慢気だ。
夕暮れ、ジャガーを撮り終えてロッジに戻ろうとしたとき、空を見上げて息を飲んだ。魔法がかかったような、日没に向かう空の美しさ。これこそ、マジックアワーだ。最高のごほうびをもらったような気持ちになった。僕はしまったカメラを慌てて取り出し、その貴重な一瞬をカメラにおさめた。
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